IT起業家・億万長者の自分を使った壮大な人体実験 - 書評 - シリコンバレー式 自分を変える最強の食事

著者のデイヴ・アスプリーはシリコンバレーのIT起業家、若き億万長者でみんなが羨む成功者だったが一つ悩みがあった。

すごく太っていたのだ。 

持ち前の起業家精神で、様々なダイエットやエクササイズを実行したが状況は改善せず、30歳になる頃には医師から将来的には脳卒中か心臓発作で死ぬだろうと宣言される始末。また日々の生活においても気分の悪い、集中できない状態が続き、脳の基本「ハードウェア」も故障しつつあった。主治医や医療関係者から推薦されたことは全部きちんとやってきたのにもかかわらず!

そこでデイヴ氏は思う。人体はインターネットのように、膨大な数のデータが見当たらなかったり、誤解されていたり、隠れていたりする複雑なシステムであり、大差がない。コンピュータのシステムやネットをハックする時と同じテクニックを使えば、自分の生体をハックできるようになるんじゃないか、と。

これを機に、デイヴ氏は「バイオハック」を、つまり「テクノロジーを利して体の内外の環境を変え、望むとおりに動くようコントロールする技術」を追求しだしたのだ。

本書に記述される自分自身と30万ドル以上を使った壮大な人体実験(!)は圧巻の一言。人体を一つの複雑なシステムと捉え、健康状態をモニターしたうえで、古今東西の様々な手法を試し、それらの影響を評価する。問題があればトラブルシューティングし、パフォーマンスに何が影響しているのかを測定し、その変動要素を絞り込む。まるでシステムをハックするかのように。

そのバイオハックの集大成が「完全無欠ダイエット(The Bulletproof Diet)」だ。

本書の中では、どの食材がパフォーマンスに影響を与えているのか、「痩せる体質」になるためにはどうすればいいのか、何時食べるのがベストなのか、寝ている間に痩せるためにはどうすればいいかなど、著者がバイオハックに取り組んだ内容が自身の体験に基づいて綴られる。その結果は著者の直感や、ダイエットの常識とされているものと反するものが数多くあった。以下にいくつか例を挙げるが、詳細は本書を確認されたい。

  • ダイエットするためには脂肪をもっととるべき
  • 運動は週に20分でよい
  • フルーツは体に悪い

俺が完全無欠ダイエットが素晴らしいと感じたのは、継続可能性がデザインに組み込まれている点である。

ダイエットの神話として「体重が減らないのは「努力が足りない」せい」というものがある。デブなことがまるで怠惰の証明ように言われてしまい、これは長らく著者を苦しめた。

しかしこの神話は、意志力の概念の誤解によるものである。ダイエットの実践者や医師でさえも、成功の秘訣はとにかく気合を入れて、無尽蔵の医師の力で過食をしないことだと信じている。しかし実際は、意志力は有限であり、意思決定の際に消費される資源であると、近年証明されてきている。

つまり、満足できる食べ物よりもダイエットの食品を選ぶ度、食べたいものを我慢する度、決定疲れによってより最適ではない選択を行うようになる。その結果、太る食べ物を食べ、遅かれ早かれ元の体重に戻る。

多くのダイエット方法は「何を実施すべきか、何を食べるべきか」は語られるが、実践するかどうか、継続するかどうかは本人の意思に依存している。しかし完全無欠ダイエットでは、「どうやったら意志力を消費せずに継続できるか」がその方法の中に組み込まれているので、その実行および継続が無理なくできるように設計されている。

完全無欠ダイエットには断続的なファスティング(断食)が組み込まれており、午後2時から8時までの時間以外は一切食事らしい食事は取れないのだが、朝一杯の完全無欠コーヒーを飲むだけでその間全くお腹が減らず、空腹耐えてポテトチップスの誘惑を耐える努力が全くいらないといったら、信じられるだろうか!

 

注意すべき点としては、デイヴ氏がアメリカ在住のため、アメリカの食材をベースとした評価であり、日本の調査と見解が異なるものがあることや、学会で決着していない議論中の内容もあることである。

しかしながら、紹介されている内容を自身で試しながら自分の健康状態をモニターし、自分自身を「バイオハック」することで、最高のパフォーマンスを引き出せるようにしたいと思わされた。

体は、日々食べている物によってできている。そのことを再認識させてくれる一冊。 

シリコンバレー式 自分を変える最強の食事

シリコンバレー式 自分を変える最強の食事

 

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